カゲナシ*横町



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のろのろとベッドを這い出て



うぅ、と小さく呻いて、私は寝返りを打った。ゴロゴロゴロ・・・・と低い地鳴りのような音が聞こえてくる。


(雨ですか雨なんですか雨なのかよ)


視界の端で、自分の髪が跳ねているのが見えた。太陽にすかせば、明るいオレンジ色に輝く髪も、今はくらーい茶色に近くなっている。日の光があるのとないのとで、ずいぶん印象が違った。


「むー」


しばらくベッドの上を転がっていたが、不意に廊下からドガシャゴッと雷鳴よりもすさまじい音が響いてきた。
私は思わず硬直し、そろっと耳をそばだてる。扉一枚隔てた廊下から、聞き慣れた声が届く。


「だから! なんでお前いつもいつもいつも俺の宝物ばっかぁ!!」

「じゃかしいそのマントの下のブツとっとと出しやがれ!! そんなホコリ被るぐらいなら酒も銃器も叩き壊してやる」

「銃器の方は確かにホコリ被らせてて俺もすんげー後悔してるけどさぁ酒は熟成中なの!! あともう一年くらいしたら飲み頃なんだよわかってこの気持ちぃい!!」

「わっかっるっかぁあああ!!! ええいまどろっこしい、ぶっ飛ばす」

「え、ちょ、ガイル顔がマジだよマジなのええ嘘マジでぇえええ!!?」


ドゴッと轟音が腹に響いた。私はまだ眠気でぼんやりしている頭を押さえて、ふるふると頭を左右に振る。
今日は一段と騒がしい。というか、この豪雨に対抗しているんじゃないかを思えてしまうほど、やかましい。


「まーったく、今日も朝からお灸を据えなきゃ、ですね〜」


にま、と笑って、私はまだ温もりの残るベッドを、名残惜しげに離れた。
てきぱきと寝間着から普段着に着替えながら、未だにやまない轟音を耳に、年上で大人っぽいところもあるくせに時折やたら子どもに戻る、緑色と黒色の二人の青年に対するお灸を、じっくりと考えていた。



大事な大事な、私の睡眠時間を返してもらえれば最高なのですけれど。



『STRANGE』 ティルーナ・エィラ


(08/12/27〜09/03/03)
お題配布もと:テオ