「なにしてんだよ、兄貴、翔夜」 「あ、ヒュゼンやっほー」 「・・・・」 ヒュゼンは自宅の前で腕組みをしながら突っ立っていた翔夜を見、次いで屋根の上でにらみ合っている兄と翔夜の相棒、雨李を見た。 「思いっきり無視しやがったな兄貴・・・・」 「なんか今は、あんまり突っ込んで欲しくないみたいだよ? 何でも、天敵克服作戦、とか」 「無理だろ」 さらりと言って、ヒュゼンはため息をつくと家の中へ入っていった。 先ほどの買い出しで手に入れてきたものを、キッチンに運び入れたとき、天井の向こう側からケゼンの悲鳴が聞こえてきた。 「あのアホ・・・・」 ヒュゼンはまた、家の外に出た。 「まだやってたのかよ。懲りろよいい加減」 「うるせぇ弟ー、こりゃ俺の真剣勝負なんだよ」 「鳥と見合ってることの、どこが真剣勝負なんだよ。まぁ実際雨李が飛んだら、兄貴に勝ち目はないと思うけど」 「だぁよねぇ。ていうか、野生児って振り込みなのになんで雨李は駄目なわけ?」 翔夜は屋根から転がり落ちてからも、玄関前の石畳でにらみ合いを続けているケゼンに問いかけた。 「いや、なんつーか、うん。本能的なところでなんか、なぁ」 「兄貴の本能が拒絶してんなら、克服もなんもできねぇだろ。兄貴、諦めろ」 「ヒュゼン、てめぇそんなすっぱりさっぱり」 「ぎゃっぎゃっ!」 そこで、雨李がひらりと屋根から羽ばたいた。思わず頭を抱えてしまったケゼンの上を通り過ぎ、そのまま翔夜の腕に止まる。 「よしよし、今日はこのくらいで帰ろうか」 「ぎゅー」 「・・・・ちくしょー」 そのまま軽く手を振って去っていく翔夜の背を睨み、ケゼンはがっくりと肩を落とした。 「まぁなんだ、雨李みたいな鳥はそうそういないだろーし、そんなに無理しなくてもいいんじゃねぇの?」 「けど、けどよぉ!!」 そこまで言って、一息吸い込んだケゼンは盛大に叫んだ。 「なんで、あの鷹もどきは駄目なんだぁああ!!」 「ぎゅーっ!」 そこへ、雨李が突っ込んできた。鷹もどき、というのが気に障ったらしい。 悲鳴を上げながら逃げまどう兄の姿に、ヒュゼンは呆れ果てて救いの手を差し伸べもしなかった。 『STRANGE』 ケゼン=ラセレクトン、蓮 翔夜、雨李、ヒュゼン=ラセレクトン (09/03/03〜09/05/06) |