カゲナシ*横町 拍手御礼小説2



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天敵は敵わぬからこそ天敵




「なにしてんだよ、兄貴、翔夜」

「あ、ヒュゼンやっほー」

「・・・・」


ヒュゼンは自宅の前で腕組みをしながら突っ立っていた翔夜を見、次いで屋根の上でにらみ合っている兄と翔夜の相棒、雨李を見た。


「思いっきり無視しやがったな兄貴・・・・」

「なんか今は、あんまり突っ込んで欲しくないみたいだよ? 何でも、天敵克服作戦、とか」

「無理だろ」


さらりと言って、ヒュゼンはため息をつくと家の中へ入っていった。
先ほどの買い出しで手に入れてきたものを、キッチンに運び入れたとき、天井の向こう側からケゼンの悲鳴が聞こえてきた。


「あのアホ・・・・」


ヒュゼンはまた、家の外に出た。


「まだやってたのかよ。懲りろよいい加減」

「うるせぇ弟ー、こりゃ俺の真剣勝負なんだよ」

「鳥と見合ってることの、どこが真剣勝負なんだよ。まぁ実際雨李が飛んだら、兄貴に勝ち目はないと思うけど」

「だぁよねぇ。ていうか、野生児って振り込みなのになんで雨李は駄目なわけ?」


翔夜は屋根から転がり落ちてからも、玄関前の石畳でにらみ合いを続けているケゼンに問いかけた。


「いや、なんつーか、うん。本能的なところでなんか、なぁ」

「兄貴の本能が拒絶してんなら、克服もなんもできねぇだろ。兄貴、諦めろ」

「ヒュゼン、てめぇそんなすっぱりさっぱり」

「ぎゃっぎゃっ!」


そこで、雨李がひらりと屋根から羽ばたいた。思わず頭を抱えてしまったケゼンの上を通り過ぎ、そのまま翔夜の腕に止まる。


「よしよし、今日はこのくらいで帰ろうか」

「ぎゅー」

「・・・・ちくしょー」


そのまま軽く手を振って去っていく翔夜の背を睨み、ケゼンはがっくりと肩を落とした。


「まぁなんだ、雨李みたいな鳥はそうそういないだろーし、そんなに無理しなくてもいいんじゃねぇの?」

「けど、けどよぉ!!」


そこまで言って、一息吸い込んだケゼンは盛大に叫んだ。


「なんで、あの鷹もどきは駄目なんだぁああ!!」

「ぎゅーっ!」


そこへ、雨李が突っ込んできた。鷹もどき、というのが気に障ったらしい。
悲鳴を上げながら逃げまどう兄の姿に、ヒュゼンは呆れ果てて救いの手を差し伸べもしなかった。


『STRANGE』 ケゼン=ラセレクトン、蓮 翔夜、雨李、ヒュゼン=ラセレクトン


(09/03/03〜09/05/06)