カゲナシ*横町 - 短編『シニガミ・一時休息』


□ シニガミ・一時休息 □



「でさー、やっぱりあのあとお財布落としたのあっちの方面だっていうから、ひょひょいっと行けば大丈夫!って思ってたんだけどね」
「最終的に『アウトサイド』の中でも完璧にアウト(みそっかす)のヤツらに見つかってボコられかけたのな」
「ついでに財布もきっちりかっきり取り返してくれてサンキューユウヒっ!!!」
「市原、歯ぁ食いしばれ」
「ごぷぺっ!?」


そろそろ日も沈みきるかという時刻、二人の少年が、あまり健全とは言い難い路地裏から軽い雰囲気で抜け出してきた。
片方は、高校生男子としては平均的な長さの天然パーマな髪(しかしナゼか前髪はストレート)にタレ目気味の大人しそうな印象の少年。もう片方は、毛先が完全に肩につくまでという、見ている方が鬱陶しいほど伸ばされた焦げ茶の髪に、色素薄めの肌をした少年。
どちらも夕暮れの裏路地という、荒んだイメージの強いシチュエーションとは無関係そうに見えるのだが。


「ぐ、ぐふ……っ、さすがユウヒ、加減されてると分かってはいるんだけど最高に効くぜ。でもなんかこの間から、フロムユウヒの攻撃だったら妙な悟りが開けそうな予感」
「ざっけんな変態なんぞと外歩きたかぁねぇんだよクソが。マゾに目覚めんならマジで『アウトサイド』のヤツらに叩き出すぞ。お前、ある意味俺よりも目の敵にされてっから」
「それは真剣に命に関わるから止めて欲しいなっ!!!」


セミロングヘアーの少年、市原みぎりは、目の前の悪友(善人面の最凶人間)拝島 友晶に殴られて腫れた頬を両手で押さえながら、引きつった笑みを浮かべた。そのまま全力で拝島から逃れようとするも、素早く襟首を掴まれてしまう。


「のわぁあああグッバイ俺の儚きガラス色の人生、来世ではバラ色で」
「戯言抜かしてんじゃねぇ。お前の人生ガラス色だったら世の中の八割を越える男子高校生の人生がコンクリと同色だ」
「はへ? 何マジな顔で言ってんのさユウヒ〜、自分で言っておいてなんだけど、俺の人生って普通だと」
「市原、俺は今市立利桧(りかい)高等学校に通う全学年の男子学生からお前の抹殺依頼を受けているんだが」
「それは一体どういうことっっっ!!!?」






(2009/03/31)