STRANGE - カゲナシ*横町

□ ラジオのある宿屋 □


一人の男が、行儀悪くテーブルの上に両足を組んでのせ、鼻歌を歌いながらラジオを聞いていた。
ラジオの内容は、楽曲紹介・・・・しかも、最近機械都市の方から伝わってきたという、一風変わった激しいリズムのものだった。

「はーん、クラシックよか、断然俺に似合ってるな、コレ」
「エイクさん、足どけてください。ラジオ叩き壊しますよ」
「そりゃ無いぜクリフ。ラジオってこの宿のだろ?」
「テーブルの上泥まみれにしておいてそんなことよく言えますね!?」

明るい金髪に緑の瞳、といった高貴な雰囲気をまとう聖職者の少年が、男の足を殴る。
その後ろには、スキンヘッドの大男も立っていた。

「・・・・やードーダム。また背ぇ伸びた?」
「・・・・別れて一時間しか経っていないというのに、お前には俺が成長しているようにみえるのか」
「だって、でかいし?」
「もとからだ。というか」
「って、とぉ!?」
「俺がでかく見えるのは、お前がどんどん床に近づいているからだと思うが」

ドーダムの言うとおり、エイクは椅子ごと後ろに倒れ込み、後頭部を強く打ち付けた。
しばらく床で悶絶している間に、クリフとドーダムとでさっさと部屋の片付けが行われる。
ラジオもスイッチを切られ、エイクが不機嫌そうに眉をひそめた。

「ラジオ」
「ご飯食べてから存分に聞けばいいですよ」
「今の曲は! 今しかやってねぇんだよ!!」

タンスの上に置いてあるラジオに素早く手を伸ばすが、その一瞬先にドーダムに横からかっさらわれた。

「・・・・ドーダム」
「駄々っ子か、お前。いくつだよ」
「見た目の通りだっ!」
「じゃ、見た目三十路で中身は五歳児ですか」

クリフが、買ってきた数種のパンや屋台の肉料理、サラダなどをテーブルの上に並べながら言う。
エイクは特に否定もせず、眉間のしわを一層深め、サッと一番大きな肉片を二、三枚つまみ食いした。

「あんたは何がしたいんですか!!」
「ラジオが聞きたい」
「子どもかっ!!」

とうとうクリフの敬語も崩れる。
エイクはキレたクリフの顔をニヤニヤと眺めながら、今度はロールパンをかっさらった。

「あっ・・・・」
「へん、僧侶とアサシンじゃー身体能力の差、出まくりだなぁオイ?」
「大人げないぞ」

ゴッ
・・・・拳にしてはやけに重みのあるもので、エイクはまた後頭部を攻撃された。
頭を抱え込みながらしゃがみ、しばらく黙って涙を堪える。
その間、頭上ではなにやら微妙な空気が漂っていて・・・・。

「・・・・つ〜、おいドーダム、てめぇなんで殴り」

そこで、エイクの言葉も途切れる。
ドーダムがそっとタンスに置き直したのは、例のラジオ。
一見、どこにも破損は見られないが・・・・。

「はぁ」

クリフのため息と、ドーダムの無表情がすべてを物語っていた。
エイクは即行でドーダムを押しのけ、ラジオのスイッチに指をかける。

カチッ

・・・・、ノイズすら聞こえない。

「こ、これで、殴ったの? 俺のヘッド」
「ああ」
「なんでまた!?」
「・・・・いつもの癖で、右で殴ったら、コレを持っていた」
「癖って、おいラジオ壊しておいて!?」

エイクの悲鳴が木霊する。
クリフとドーダムは盛大なため息をつき、エイク自身も四半秒後「あ」と小さくつぶやいた。
耳を澄ませば、廊下からひそひそと声が聞こえてくる。

「・・・・よし」
「せっかく、久々にふかふかベッドで寝れると思ったのに」
「諦めろ、クリフ。また即席ベッドこしらえてやる」
「頼みます、ドーダム」
「はいはいそれじゃー行くぞ、うん」

エイクは何事もなかったかのように、壁に引っかかっていた布袋の一つを肩にかけ、部屋の窓を大きく開いた。
その後ろに、取り出したばかりの食事を鞄につっこみつつクリフが続く。
ドーダムは最後、家具やらの確認をし、テーブルの上に部屋の代金と『気持ち』の追加料金をおき、しんがりへ。

「・・・・あ〜あ、レヴィの新曲、途中だったのによぉ」

ボソボソとそんなことをつぶやきながら、エイクはひらりと窓から飛び降りた。
三日月の柔らかな明かりで照らされる、夜の町へ。

・・・・翌朝から、宿屋の主人はしばらく全部屋のラジオを撤去してしまいましたとさ。


□ fin □


エイク、クリフ、ドーダムの三人組でお送りしました(笑
彼ら、ものすんごい先走りなキャラです。だって・・・・
初登場は、三部ですもんw(爆