STRANGE - カゲナシ*横町

□ 未来、未来のお話? □


私は今、猛烈に、怒っている。
怒っていなければ、こんなにドカドカと廊下を歩いたりしないし、同僚と目があった瞬間にガンを飛ばすこともしないし、口から絶えず罵詈雑言が流れることもない。
ただ、そんな私を見ても『怒っている』と認識しないヤツが、この世に三人いた。
・・・・いや、正確には一人・・・・。残りの二人は、私がどれほど怒り狂っていても、態度をまったく変えずに雑用を任せてくるだけ。
そして、その『一人』が、私の神経を逆なでするわけで・・・・。


「ッコッラァ何また脱出しよーとしてんですかあんたぁっ!?」

ズバンッと勢いよく開け放たれた扉の音と、私の怒鳴り声に、私の目の前にいる人物は窓に引っかけていた右脚をおろして、やれやれとため息をついた。
「言葉遣いは乱暴なのに、妙なところ律儀だね。敬語使ってるし、実力行使に出ようとしないし・・・・あ、ひょっとして僕の方から君へ近づいてほしいとか?」
「リぃぃぃダぁぁぁ? あんっまり馬鹿馬鹿しいことほざき続けてると、食堂に通えなくなりますよ? 無差別攻撃になりますが、リーダーのものだけにはやたら純度の高い薬(ヤク)ぶちこんでやりますから」
「おや、食堂に通えないとなると・・・・ああ、そうか。手製の弁当でも作ってきてくれるのかな? でも、このまま食堂に行けば、僕の食事にだけ何かすばらしい隠し味でも入れて」
「ああああこの会話の流れがウザイ、ウザすぎる!!! なんであんたが地方に飛ばなかったのよぉおおおおお!?」
「それはまぁ、ここ自体地方だからでしょ」
「フェラード・リーダーは首都幹部へ昇進、カッティオ・副リーダーとメルティナ先輩は仲良くご旅行? で、なんであんたがリーダー昇進なんだレイド・デュアーぁぁ!!」
「お、ようやく呼び捨てにしたね? でもまぁ、リーダーなんて役職よりも、普通にレイドって呼んでくれるとうれしいなぁ」

リーダー室の革張り椅子にゆったりと腰掛けながら、現在の『ガレアン』リーダー・レイドは、私がぎゃあぎゃあ騒ぐのを実に面白そうに眺めてくる。
ああ、この目だよ。もうポンポンと人のことお手玉みたいに扱って、いつ落ちるかみたいないや〜な・・・・。

「にしても、君、喉が痛くならない? そんなに怒鳴っていると、きれいな声がかすれてしまうよ」

・・・・余裕ぶっこいてやがって。

「もういいです。もう怒鳴りません。面倒です・・・・次からは、カッティオ副リーダー直伝の『はりせん』を使用させていただきます」
「うん、がんばって? あのスパンスパン音がするの、カッティオでも十回に二、三回しか僕に当てられなかったから。まぁ、メルティナだったら先に行動不能にして遠慮なく殴りまくってくれたんだけど」

あああ、カッティオ副リーダーの言ってたことはこれかぁぁぁ。
『一応言っておく。使うのなら、粘り強く行け』・・・・あの人も執念深い人だったからな。

「そういえば、君、どうして僕が脱走しようとしてるのに気づいたの?」
「パン屋のリックが、『リーダーがお姉ちゃんと仲良くおしゃべりしてたよ』と言っていたのですが、時刻的に明らかに、巡回も何もないデスクワークの時間だったはず・・・・と思い、逆算して特攻かけてみました。実際、ここまでどんぴしゃだとは思いませんでしたが」
「・・・・そうか、弟の方は見てなかったな。まったく、君に妨害されたのは・・・・もう数え切れないな」
「私も、リーダー補佐になってからここまで怒鳴りっぱなしなんて信じられません」

なんだか、一年前までのメンバーが実に恋しくなってきた。
おどおどしながらもきちんと書類を片付けていく、健気なリーダーの隣にメルティナ先輩が立っていて、隣の副リーダー室では、この常春をカッティオ副リーダーが押さえ込んで、時にはメルティナ先輩とともに返り討ちにしていたり・・・・。
思わずため息がこぼれた。やはり、この人の補佐なんて私には向かない・・・・。疲れる。

「・・・・」

カタッ、と何かが揺れてぶつかる音がしたけれど、私は気づかなかった。あの頃はまだ平穏だったかな〜とか、このリーダーの真似をしてサボるバカ隊員が増えてしまったな〜とか、悩んでいて

ふっと、首の後ろに腕を回され、額にかすめるように口づけられた。

「・・・・」

エマージェンシー、エマージェンシー

「ほら、ひょっとしなくても君が握りつぶしかけているのって、僕の処理待ち書類でしょ? はいはい、サインしたら僕はもう行くからね〜」
「・・・・こ」

硬直のち、視界いっぱいの満面の笑み。
それが横に流れていって、次に見えたのは私に背を向ける『阿呆』の無防備な・・・・。

「っこんのぉ常春たらしがぁあああああああああああああああっっっっ!!!」

理性のたががはずれて、後はもう何度やったことか、ドロップキック。
いつも通りのコース、いつも通りに決まったそれは、リーダーを二階の窓から地上へたたき落としていった。

・・・・その後、きらめくガラスを全身にまとわせて、ドクドクピューと鮮血をほとばしらせる笑顔のリーダーに、私はこのときばかりはきちんと謝罪した。


□ fin □


この常春には、一生数多の女の尻を追っかけてもらおうかなーとか思ってましたが、ね。
彼女が本命になるかどうかは、まだ分かりません。マジに。
一部、二部から二年後・・・・つまり三部のフィロット。