第一部 語 遠い 遠い昔のこと 薄暗闇の この大地を 唐突に 一筋の光が照らし出した そして 大地に住まう一人の若者が 光の中から 一つの珠を授かった 神聖にして 静謐(セイヒツ)な光 その不可思議な珠は 若者に 先見(サキミ)の力を与えた 力を得た若者は 人々を先導し 新たなる大地を拓き 国を築いた 賢王と崇められし 若者の治世は 人々に安寧をもたらした しかし 若者が治世の後の 王となりし者…… その誰もが 珠の力に魅入られ 利用し 暴君と化した 荒廃してゆく国を守ろうと 立ち上がりしは 一人の占者 占者は 妖魔(アヤカシ)を祓う力を 宿していた 彼の者は その力でもって 珠を砕き 国の四方へ封じた 砕かれた珠は それでも尚 国を守る力を 失ってはいなかった 彼の占者は 珠の力に頼ることのない 新しい国 『暁国』を ここに建てた ―――名も無き語り部の言 |
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