STRANGEU - カゲナシ*横町



S T R A N G E U




□ 第一巻 守るための誓い - エピローグ
『目を開ける』
『口を開き、閉じる』
『右手を挙げる』

「なかなか、馴染んできたか?」

 彼の目の前に跪く男は、彼の独り言に肩をぴくりと震わせた。彼はそれに気づいたが、言及はしない。

「ふむ、肉体を持つのは久々だ。少々勝手が……わからんな」

 男は、彼の姿を何度も見たことがあった。かつて幹部の中でもっとも手が着けられず、最高幹部ですら手に余らせていた女傑のもとで首を飛ばされずにいた、稀有な男。
 その彼が、最高幹部の席に収まっている。
 それは。

「ジオン、だったか」
「は、はっ」
「お前には、ヴィンスの後を継いでもらう。あの女……死んでいるとは思わないが、まあ、生きているとしてこうも網に引っかからないと言うことは、あの町に入り込んでいるんだろう。厄介きわまりないが、仕方ない」
「は」

 補佐官の顔をしたペルソナは、ジオンなど見向きもせずにその体をいじっていたが、淡々と話しかけられ、ジオンは無条件で頭を垂れる。

「……もっと、早くにことを起こすべきだったか。今となっては遅いがな。チャームの集まりも悪い。本来ならすべて空中都市に集まっていなければならないはずなのだが……」
「あ、の、ペルソナ、様?」
「まだいたのか。指示はない。通常作業に戻れ」
「は、はいっ」

 明らかな安堵をにじませて、ジオンはその場を去って行く。
 一人、幹部室に残されたペルソナは、ぺたぺたと補佐官の顔を触りながら、ふうと息を吐いた。

「まったく、要はあの町だというのに。なぜ帰ってきた、『無』を司るもの。『風』と『星』まで連れて……厄介だ、本当に。喜ばしきは、『火』が未だ町を訪れていないということか。他はまだ眠ったまま……『水』『土』『空』だったか」

 顔を触ったまま、するりとあごの下へ手を添える。

「まあ、司として機能しているのは『無』のみ、まだ幼体の『星』はその気になれば処分は最も容易いだろうな」

 その一方で、左手を空中に伸ばし、ぴん、と弾く。
 瞬間、ココンと何かがぶつかる音がして、空間が歪んだ。

「まあ、まずはこの体を慣らさねばならないだろうし……辛抱か」

 深い闇に埋もれながら、ペルソナはふと、その口元に薄い笑みを浮かべた。