□ 第二巻 弱者と騙し、そして強者 - プロローグ 部屋には、時計の針が動く音だけが響いていた。その場には数人の人影が見えるのに、彼らは一つの机を囲んで微動だにしない。 そんな沈黙を、机の前に座る一人の男の咳払いが打ち壊す。 「……どう思う、お前たち」 「反対します」「普通反対です」「ていうか嫌です」 それぞれ男の周りにいた人間たちが、嫌悪だの気味悪さだのバツの悪さだのを浮かべて顔を背ける。一通りの答えを聞いた男も、ため息とともに視線を落とした。 「だよなあ……。だが、今年は呼ばねばならんだろう。昨年だって、連続優勝支部だということで辞退してもらった……というか来るなと命令したんだが」 「だからこそですよ、昨年のことは、我々が単にあの人たちに来てほしくなかっただけだと、あの人が分からないわけありません! ぜっっっっったいに嫌がらせだの妨害だの錯乱だの仕掛けてきますよ!? 彼らが来ると聞いただけで、本部隊員の士気ががっつり下がりますし」 「というか、いつになったらあそこ代替わりするんです?」 ぼそりと、男たちの一人がつぶやく。彼の言葉に、部屋にいた人間全員の肩が震えた。 「代替わりって、あれか支部の中間の人材に任せて、上は引退するとか……」 「や、でもあそこのリーダーって、四十前後でちょうど脂が」 「「「あそこのリーダー及び副リーダーを本部に呼ぶなんざ絶対嫌だ!!!」」」 むしろあの町で一生すごして引退して平穏に過ごしてほしい、つまり関わりたくないと頭を抱える男たち。 彼らが一様にまとっているのは、黒を基調とした軍服のようで、それぞれが異なる剣を持っており、左肩と右襟に複雑なデザインの紋章を縫い付けていた。 ヨーゲンバード国慰安維持部隊【ガレアン】本部の幹部連。 その中で決定権を持つ男が、しぶい表情で一枚の紙を見下ろした。 「……確実に、今年もあいつらが来るのだろうな。せめて他の支部の者と暴力沙汰を起こさなければ……」 そして、おもむろに紙の中央へ印を捺す。 『ヨーゲンバード国治安維持部隊《ガレアン》本部より召集を命ずる。 来月末において、第三十二回各支部交流試合を執り行う。 支部の優れたる人材を選定し、首都へ来られたし。』 ここから、お祭り騒ぎの幕が上がった。 |