□ 悪役たちと小さな少女 - 5)さようなら 「パパぁ」 「どうした、ウィン」 「おじちゃんたち、どこ行っちゃったのぉ?」 「うーん、パパにも、よくわからないな」 「もう、会えないのかな・・・・?」 「そんなことはないよ。きっと、どこかでまた会える・・・・」 ドドドドド・・・・ 土埃が舞い、視界が遮られる。 「どぅうああああっっっ!!? お、おち、おち落ちたぁあああああっっっ!! 誰かこの暴れ馬止めれぇえええ」 「ボ〜ス〜、どこまで行くんスかぁああああっっ」 鞍から体が三分の二以上ずり落ちた状態で、必死に手綱に捕まりながら振り回されているドーセインとそれを追いかける 少年盗賊。 二人をのんびりと、どうでもよさそうに眺めながらヒユとギオはあくびをする。 彼らは牢にいた罪人たちを助けるだけ助けていき、さっさと覚醒させて本部からまんまとトンズラしていった。 一週間が経過した今頃、罪人の九割に脱獄された本部の監獄(と『ガレアン』メンバーの心)には木枯らしがふいているだろう。 確実に、住民からの信頼度もがた落ちだ。 「はぁああ・・・・いんや、早かったねぇ」 「そうですわね、あっという間にビサクからも離れてしまって・・・・近くの村から何頭か馬を失敬 したはいいですけれど、どこへ行きましょうか?」 「それよかコレだよコレ」 ほぅ、とインスタントの紅茶(上記の村からかっぱらってきた品)を片手に、優雅にため息をつくオカマに、 ヒユは手に持っていた新聞の一部(上記の以下略)を見せる。 そこの一面を飾っていた記事は・・・・。 『「ガレアン」幹部不正取引、殺人未遂事件の真実! ・・・・「五芒星」の一人、ノベリオ=アーロズが容疑者と見られていた数々の事件、 しかしそれらの真犯人は、同じく「五芒星」幹部のウイ=ケンズであった。彼直属のメンバーの告発により、 様々な証拠が・・・・』 「・・・・しかもさぁ、このウイってヤツ、ノベリオさん殺そうとしてたあのバカじゃん」 「全部ノベリオさんに押しつけて、自分はまた甘い汁をすすっていたんですのね・・・・ああっ恐いですわ!!」 「俺から見ればお前の方がこえーよ。てかさ、男言葉に直してよ!?」 「あら、わたくしこちらの方がしゃべりやすいのですけれど」 「いやあのさ、コイツと対峙した瞬間『俺』って言ってたじゃん、なんでよ、なんで戻っちゃうの!!」 「るせぇチビっ!」 「チビ言うんじゃねええぇえぇええっっ!!」 ぎゃーぎゃー騒ぎながら、それぞれ戦闘体勢になったヒユとギオが『 「ぅおおおおおおわぁあああああっっっ!!?」 暴れ馬の急な進路変更に耐えきれず、慣性の法則によって吹っ飛んできたドーセインが飛び込んできた。 「「ぉううぎゃああああああっっっ!!?」」 ああボス、ヒユ先輩っっ!! オカマぁ大丈夫かぁっっ! などといった声が、新顔盗賊たちからあがる。 彼らの『どんちゃん騒ぎ』は、いつになっても終わらない・・・・。 ぱさりと、『ガレアン』専用郵便経路によって配達されてきた新聞を見て、レイドはおもしろそうに目をきらめかせた。 「へぇ〜、ふむふむ・・・・なるほどぉ」 「朝から一体何なんだ、新聞くらいもう少し静かに読め」 「あ、カッティオ、ここの記事みてよ」 「俺のところにももうきた。ふん、馬鹿馬鹿しい・・・・『ガレアン』幹部も堕ちたものだ」 「じゃなくって・・・・ほら」 ぺらぺらとページをめくり、ヒユが手に入れ損ねたその部分をカッティオに見せる。 「・・・・」 そこにのっていたのは、おそらく監視カメラからの画像であろう白黒写真。 ぼやけていてもわかってしまう、あのボールとチビとオカマのシルエット。 『集団脱獄! 本部に響きわたった怪奇放送との関連は?』 「・・・・まぁ、ヤツらならやるとは思っていたが、さすがに早かったな」 「だよねぇ。やっぱああいう『変人』はこの町でそのままおいといた方がよかったんじゃないかなぁ? あーいう『普通の町』よりさ」 カッティオの非難めいた視線から逃げるように、レイドは新聞を折りたたんでそそくさと部屋を出て行こうとする。 「待て」 「ん?」 「・・・・巡回があるだろうが。なんのために来たんだお前」 「うーん、コレ見せるため? いや、一人で見るよりおもしろいかな〜って」 「お前も即刻クビにしてやる、この不良メンバーっ」 「あれカッティオ最近沸点低くないっっ!?」 レイドとカッティオの叫び声は、仮眠室にいたメルティナにも届き、二人はそろって粛清されたのであった。 |