![]() (3) なんとか森を抜けた三人はネーリッヒにペンダントを返し(いつもの態度だった)、町へ戻った。 なぜかカッティオもガイルの家までついてきて、昼食を一緒に食べることとなった。 「・・・・」 「なんだよ」 「・・・・これ」 「ああ見りゃわかるよキノコだよ」 「・・・・・・・・」 「あーもう分かったパスタでいいな!?」 自分でとってきた(美味しそうだけど謎の)キノコをガイルに手渡し、カッティオはティルーナとのんびり昼食ができるのを待った。 ガイルは朝に食べた温野菜をさらにざっと炒め、カッティオが渡したキノコを少しくわえた。 お湯を沸かし、パスタの麺をゆでる間に、カッティオ用のソースも作る。 二十分ほどして、ガイルは自分とティルーナ、カッティオの分のキノコパスタを運んできた。 「お前、まだ野菜食えないんだよな」 「悪いか」 ぼそりといいながら、カッティオはひょいと空色の錠剤を水で飲み込む。 テッド作のカッティオ専用栄養剤を怪しげに眺め、ガイルも食べ始めた。 「はぁ、まだまだ時間がありますね。もういっそのこと、コレ食べたら行きませんか〜?」 「もうお前完食してるだろ。・・・・けど、アデレーナとミリルが七時っつってんだから、守らなかったらどーなるか」 「俺も、今日は何でかメルティナとフェラードが俺たちの分の仕事もやると言っていたから、ヒマなんだ」 「外にももう出たくなヘクシュッ」 「家の中でも一枚羽織ってたらどうですか、ガイルさん」 ティルーナは食器を下げ、あふ、とあくびをする。 「そういえば、今日は寒かったせいでちょっぴり早起きなんでした・・・・お昼寝しまーす」 「太るぞ」 「私は人と消化器官が違いますから太りませんよ〜」 ぼそっとガイルに聞こえない程度の声量でつぶやいた後、ティルーナは鼻歌を歌いながら二階の自室へ向かった。 ガイルとカッティオはゆっくりとパスタを片付け、はぁとため息をつく。 「ヒマだ」 「・・・・ああ」 「・・・・・・・・あ、そういえばさカッティオ、レイドはどうしたんだ?」 「あー、あいつはミリルの指示で『アクセント』に行った」 「・・・・レイドも?」 「も、って・・・・。・・・・あ、ステントラか?」 二人は再度沈黙する。 一体、『アクセント』で何が行われているのだろうか? 「で!? いったいコレはどーいうこと!?」 「まぁまぁ、『あれ』にゃこいつが必要不可欠! ・・・・あ、これもきちんとつけろよ」 「なっなっなんでー!!!」 というわけで、現在六時半。 「・・・・ね、寝ちまった」 「俺も久しぶりに、爆睡したな・・・・」 「びっくりしましたよ〜、お二人ともこんな寒い部屋でよく寝られましたね? 死にますよ」 「お前が起こしてくれなきゃ死んでただろうな。っくしゅ」 ガイルはずびーっと鼻をかみ、眉をひそめる。 「やべ、本当に風邪引いたかも」 「確実に引いてるでしょうに。ま、ティッシュ持っていきますか?」 「そーだな」 ガイルとティルーナはメーベラ、ヴィキの葉を、カッティオは薬草を入れたかごをかかえ家を出た。 日もすっかり落ち薄暗くなり、フィロットはさらに寒さを増していた。 三人はさくさくと『アクセント』に向けて歩き続け、着いた。 「? なんだこれ」 「わっ可愛い」 ガイルとカッティオは首をかしげ、ティルーナは女の子らしく両手を合わせ、目を輝かせる。 フィロットでも指折りの美女アデレーナが営む酒場『アクセント』の看板の前に、三段重ねの雪だるまが置かれていた。 身長はガイルの肩ほどまでと相当あり、頭の上にバケツやら何やらが被せられてさらに大きく見えていた。 「マフラーと手袋もしてますよ。あ、この鼻にんじん!」 「なぁティルーナ、これ・・・・」 「あ、雪だるまっていうんです。私のいた村じゃ、雪が降った後の日によく作りましたよ〜」 ティルーナはきゃあきゃあ言いながら、雪だるまをつつき回した。 その声が聞こえて、店の戸が開く。 「おや、二人とも時間ぴったりじゃないか。律儀だねぇ」 「アデレーナ、そんなドレス着てたら風邪引くクシュッ」 「ふ、アンタの方が先に風邪引いたみたいだね。あたしゃ慣れてるよ」 つややかな長い黒髪は月の光を受け輝き、やや吊り気味の蒼い瞳は幼い少女のようないたずらっぽさを秘めている。 首筋と肩を見せる明らかに夏場のドレスを着ながらも、アデレーナは寒がる素振りを見せずにやりと笑った。 「メーベラとヴィキの葉、どうだった?」 「これだろ? でも、なんでこんなもん」 「いんや、ミリルに前イロイロと聞いてね。それ二つは寒さに強いって言われてるけど、さらに雪に埋もれても枯れない極上品が存在するって」 「・・・・極上品? これが、か。何度か見たことあるが、対して変わらないが」 「ミリルとティルトが見りゃ一発だろ。あ、カッティオ、あんたはどうだい、薬草」 「ミリルに頼まれていたものは、とりあえず採ってきた」 「うんうん、上々じゃないか。おーい二人とも! 最後の材料だ!」 「あ、本当ですか?」 アデレーナの後ろからひょっこり現れたのは、すみれ色の髪と瞳をし、眼鏡を掛けた優しげな印象の女性、と。 「ご苦労様、ガイル、カッティオ、ティルーナちゃん。寒いだろ? 入ってよ」 女性、ミリルそっくりのすみれ色の髪、瞳で眼鏡を掛けた・・・・青年。 ミリルの弟で、セージのティルト。 「なぁアデレーナ、一体何・・・・」 そこまで言って、ガイルはぴたりと足を止めた。 カッティオとティルーナも「あ」とつぶやく。 『アクセント』においてあった椅子が全て壁際によせられ、テーブルは一カ所にまとめられてクロスをかけられている。 そして、椅子に腰掛けながらのんびりとお茶を飲んでいるのは・・・・。 「ステントラ、ネーリッヒ!?」 「やっほ〜ガイル、ルーちゃん。ねぇ見てくれた? 俺の傑作」 「ふん、やっと来たか。好奇心に負けて、時間より早く来るんじゃないかと思っていたんだが」 ステントラは相変わらずの格好、ネーリッヒは朝に森の前で会ったときより少しだけおめかししていた。 「え、なんでネーリッヒ」 「あたしもアデレーナに頼まれてね。もしあんたたちが来たら、何かしら手伝ってやってくれと。役に立っただろう? 即製の探知宝具にしちゃなかなかのものだったし」 「なぁ〜、ガイル俺のこと無視〜? 俺も寒いなかがんばったんだぜ? 外の丸っこいの作るのスゲー大変で」 「え、あれってステントラさんが作ったんですか?」 「俺だけじゃないけどな! ほとんど俺だ!」 そう言って、ステントラはぐびっと紅茶を飲み干した。 「あの、ガイルさん、カッティオさん、お頼みしたものを下さいませんか?」 「あ、悪い」 「・・・・ん」 ガイルとカッティオは、ミリルとティルトにそれぞれの品を渡し沈黙した。 「・・・・あー、アデレーナ、俺たち帰って」 「ダメだからな? お前たちも残るんだ」 「だから、何するんだ」 「パーティだよ」 ぱーてぃ? と三人は首をかしげる。 「前に、ステントラが酔っぱらいながら話してくれてね。あたしらにとっちゃ特に行事もなんもない頃だけど、異国じゃいろんな人が集まってパーティをする『クリスマス』という日があるそうじゃないか。どーせみんな退屈してるだろうし、どんちゃん騒ぎにゃ飛びついてくるだろ?」 「酔ってたから忘れたけどアデレーナ、俺からイロイロ聞き出したらしーんだ。で、雪だるまとかツリーとかごちそうとか考えて」 「ご、ごちそう・・・・!」 ティルーナが身を乗り出す。 「そいで、とりあえずきちんと働いてくれそうな人を選んで、それぞれの準備にあたらせたワケ。まー俺らなんだけど」 「そうそう、ちゃんと品を持ってきてくれて、手順が狂わずにすんだよ」 アデレーナが頷くと同時に、扉が開いた。 全員でそちらを見ると。 「・・・・えっと、アデレーナ? 『パーティやるからヒマなヤツ来い』って・・・・」 炎のような赤の長髪を頭の上でまとめ、厚手のローブを着た青年エイルムが入ってきた。 それに続き 「やっほ〜! パーティって七時半くらいからだってコレに書いてあったけど、待ちきれなくって来ちゃった!」 「おぅし、こーいうときこそ酒だろ酒! ぅわーココでパーティなんて久しぶりじゃね?」 「兄貴また酒酒って・・・・ってあーガイル! てめぇも来てやがったのかクソ獲物がねぇ!」 「ウィリンちゃんそんな薄着じゃ風邪引いちまうよホラこれ着て!」 「あ、アデレーナさん招待状ありがとうございます! 母さんたちは、いいって言ってて」 「・・・・・・・・」 「いやぁ、みんな集まってるようで。私も出遅れずにすんだようだねぇ」 シミだらけ白衣姿のウィリン、茶髪で体格のいいケゼンにそれの小型版のような姿のヒュゼン、ウィリンに自分のコートを着させようとするジジバカゴーゼン、うっとうしい鎖帷子などの防具を脱いだ普段着のフランツ、無言のネファン、相変わらず怪しげなテッドなどなど。 「一気に人口密度上がったな」 「まだまだ、台所にゃ二人とニナも・・・・ああ、もう一人いたか」 「アデレーナ、副リーダー二人はもう着いていますか?」 「こ、こんばんは。あ、み、みんないる〜」 さらに、『ガレアン』の制服を来た無表情の女性メルティナと、フィロット地区『ガレアン』リーダーのフェラードが入ってきた。 カッティオは二人を見て・・・・ポツリとつぶやいた。 「そういえば、あの女たらしはどうしたんだ?」 「あ、レイド? あいつならあっち」 ステントラはそう言って台所に通じるドアを指さし、数秒沈黙していきなり爆笑し始めた。 「す、ステントラ?」 「ぶ、くっははははははーぎゃーははっいやあれ、も、・・・・ぶっ、アイツ、ちが・・・・ぶふっ」 「いったんお前落ち着け。レイドがどうかしたのか?」 「そ、そりゃ・・・・」 見れば、あのアデレーナとネーリッヒもくっくと笑いながら肩を震わせている。 その場に居合わせた変人たち全員は、そろって首をかしげた。 「そ、そーだね。そろそろお披露目といくか・・・・お、っぷ・・・・ふふ、おーいニナ」 「なーんですかぁ〜?」 「レイド、ちょいと引きずってきておくれよ」 「やめてくれー!!!!」 「!?」 いきなりの絶叫に驚き、全員がドアに注目する。 「や、やめ・・・・みみみミリルさん助け」 「いえ、でも、レイドさんそれやらないと、アデレーナさんに怒られて」 「こればっかりはもう! 僕の許容範囲軽く突破してます!! ホントやめて!?」 「レイド、往生際が悪いよ。さー行った行った」 「そぉですよ。男なら腹をくくって!」 「ティルト、ニナ! 君らも何でこんな俺をおとしめるよーなぎゃああああ!!?」 一瞬だけレイドの素の声が聞こえ、勢いよくドアが開かれる。 それを見た者たちはまず、目を点にした。 |
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