カゲナシ*横町 - クリスマス企画『ミリルの頼み事』

[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

□ ミリルの頼み事 □


(3)

夜七時過ぎ、『アクセント』ではクリスマスパーティが始まり、わいわいがやがやと賑やかに・・・・。

「・・・・」
「カッティオ、いつまでこそこそとおれ、・・・・もういいや。俺のこと見て笑ってやがんだこの野郎」

普段の数十倍口が悪くなっている同僚にゴン、と後頭部を殴られ、カッティオは無表情のまま振り返る・・・・が、微妙に口元が引きつっている。
それを見て、レイドは顔の筋肉をぴくりと、実に器用に動かした。

「てめぇ・・・・」
「・・・・おい、いつものキャラはどうした」

飄々としていてキザでナルシストで女たらしで・・・・という部分が、実は演技だと言うことを知るものは少ない。
というかそんなの演技と思わない。

「にしても、よくまぁそんなもの承諾したな?」

カッティオはレイドの着るサンタ衣装を、上から下までじっくり見ながら言う。

「ステントラにがっちり固定されて、最後は失神させられたんだよ」
「なるほど。しかしお前を失神させるとは、ステントラもなかなか・・・・」
「ティルトが! 裏切りやがったんだよ!」
「それはお前がミリルにいつもちょっかい出してるからだろう。当然だ」

そう言いながら、カッティオはテーブルに置かれた鍋からスープをよそう。
ずい、と差し出されたそれを思わず受け取り、レイドは訝しげな表情をする。

「枯れ葉がそのまま入るのかと思っていたんだがな。お前の分にきっちり入れてやろうと思ったのに」
「枯れ葉って、お前・・・・」
「スプーン」

スプーンを手渡され、レイドはため息をつきながらスープを飲もうとする。
が、スープをすくったスプーンを口元まで運んでから、ふと目の前に立つカッティオと目が合う。
カッティオは相変わらず無表情だが・・・・なにかを待っているようで。

「・・・・・・・・」

レイドはまたスープに視線を落とし、しばらく固まって、やがてゆっくりとすすった。

「・・・・ふーん、薬草入りのスープねぇ・・・・」

ちら、とカッティオを見る。

「俺が採ってきたヤツだ」

カッティオは聞かれてもいないのに、ぼそりとつぶやいた。
そして、ぷいとそっぽを向き、自分の分のスープをよそう。
レイドは、珍しく照れている友人をとっくりと眺め、吹き出した。

「なんだ」
「ふ・・・・いや、うん。案外ガキっぽいんだなって」
「・・・・・・・・」

カッティオの眉間のしわが二本ほど増える。

「・・・・今日は、なんだってそんなに言われるんだ」
「あ、他にも言われたの?」
「・・・・・・・・」

沈黙が肯定となり、レイドは今度こそ腹を抱えて笑い始めた。

「くっ、はは、ふふふふ・・・・あは、はは!」
「・・・・お前の、その格好ほど、笑えるとは思わんが」

ぴし、と二人の間で何かが砕ける音がした。
瞬間、レイドはスープを一気に飲み干して、乱暴に皿をテーブルにおいた。
またグレ始めたレイドを見て、カッティオはふぅ、と天を仰いだ。
カウンターにおいてあったグラス二つに、半分程まで酒を注ぎ、一方をレイドに差し出した。

「・・・・――――――。・・・・」
「・・・・は?」
「なんでも、クリスマスでの合い言葉・・・・とか、ステントラがよくわからんことを言っていたが」

レイドはぽかんとした表情でカッティオを眺めて、ふ、と微笑んだ。

「へぇ、そうなんだ。てかステントラってホントいろいろ知ってるよね。どこでそんな知識仕入れてるんだか」
「さぁ」

グラスを受け取り、ついでに立ち上がる。
かち、とカッティオのグラスにぶつけ。

「・・・・」

口を開く。



・・・・ Merry Christmas
<< Back      Next >>





素材提供 :fuzzy