Mission:5 果てまで逃げろ 灰色、としか表現できないだだっ広い大地を、二つの影が全速力で駆け抜けていく。 片や、白をベースに所々淡い青色をしたラインの装飾が施されているスカイバグル。片や、藍色のボディをした消音器の取り付けられている改造ドライド。 「逃げろ逃げろ全力逃走―――――!!!」 「少しは冷静になった方がよいかと」 「うるっせぇ怒鳴ってなきゃ痛さと眠さで意識吹っ飛びそうなんだよ!!!」 今まで乗っていたバイクよりも二回りは大きなドライドを、重傷を負っているにもかかわらず巧みに操る忍。そんな彼を横目に、クレーズはこの青年に出会ってから何度目になるかわからないため息をつく。 「にしても……なぜ、自分まで」 「お前、あのままあそこに放っておいたら殺されてただろ。俺が抜け出すの目の前で見てて防げなかったし、追い詰めたかと思ったところで取り逃がすし」 「それは当然のこと、だが、自分たちの場合は殺害ではなく、しょぶ」 「マシンじゃなくて人間だろ、お前は。だから『殺される』って表現で正解なんだよ、ぐだぐだ言うな。それに……生きてほしいって言われたろ?」 珍しく、クレーズの無表情に負けず劣らずな仏頂面をしながら、忍が呟く。クラの運転するスカイバグルの座席に、適当なロープと鎖でくくりつけられているクレーズは、もう一度、ため息。 「しかし、長官たるシュヴァルツ、あれは諦めが悪い変態であると」 「…………あれ、なんかお前の口から変態とかそういう言葉が出てくるとびっくりなんだけど。まあ、やたら俺の体で実験したがってたからな、あいつ」 「逃げて終わりはあり得ない、と」 「んなもん知ってるわ。つーか、お前に会うまでだって、俺と鉄はずーっと逃げてんだぜ? 逃げに関しちゃ超一流よ」 「胸を張ることでもないかと」 「言ってて自分でも空しかったわコンチクショー!」 「……忍、さすがに落ち着かないと、またどっかの血管切れちゃうよ」 ぎゃあぎゃあと喚きながら逃走劇を繰り広げていた少年と青年、二体のマシンは、土埃を巻き上げながらあっという間にその姿を消してしまった。 ……後日。 機械生命体政府軍・辺境第一基地長官、シュヴァルツ=アイトマートフの名で、十数年ぶりに新たな全区域対象指名手配人物が登録された。 No.〇〇〇〇〇―Q8『ノーマル』・通称『シノブ』。 No.一〇五七六『生体改造モデルサードタイプ・元【ALT】対マシン破壊戦闘員』・通称『クレーズ』。 この二名の名とコード、そして身体的特徴や遺伝子データに至るまで、彼らを彼らたらしめる全ての情報が、全基地全施設全クラスタに公開された。 ※ ※ ※ 「それから様々な事件に行き会いつつ、今に至る……と」 「そ。いやぁーあんときはさっすがに死ぬ、マジ死ぬって思ったね」 「そうだねー。結局あの後、忍は無茶しすぎて失血死寸前にまでなるし、クレーズはワクチンが効きすぎてまともに体が動かないままだったし」 「な、和やかに話すことですか!?」 「ま、何事も過ぎちまえば、ってなぁ。なあ、クレーズ」 「……そこまで、自分は脳天気にはなれないが」 「「こいつ(この人)が毒舌家だってのが分かっちゃったのはなぁ」」 「…………ん、あれ、忍さん」 「お、そろそろ着いたっぽいな。おい、クレーズ!」 「聞こえている。―――コード入力、『楽園』管理者リース、応答せよ……」 「仲間が増えたよー!」 Fin... |
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