STRANGE - カゲナシ*横町



S T R A N G E




□ 第二巻 古き遺跡の都 - 第二章 5.爆弾犯
「ん……あれ? 兄さん、ここも違うんじゃない?」
「はぁ? どれどれ……あ、ホントだ。ちぇ、ここもスカかよ」

灰色のマントを頭からすっぽりかぶった二つの人影が、まだ黒煙の上がる砂と小石だらけの広場でなにやらごそごそともの探しをしていた。その砂と小石は、もともと貴重な石碑や祭壇の一部で……。
ザッ

「「っ!」」
「……てめぇらか」

ゆらりと、ガイルは剣を縦に構えながらつぶやいた。限りなく無表情に近い、ガイルのマジギレな表情。そこからびしばしと放たれる殺気で、一瞬失神しかけた爆弾犯の二人だったが本能的に自我を取り戻した。

「うきゃ見られ」
「ちょおまっ」

甲高い悲鳴に近い声を上げた方の口を、もう一方が慌てて塞ぐ。
ガイルはそれ以上しゃべろうとせずに、すぅ、と目を細めて
ダンッ!
地面を蹴った。

「「うひょわっ!」」
「!」

しかし爆弾犯は、ガイルの渾身の一撃をひらりとかわした。ガイルはカツ、と剣先を地面に当て、また同じように構える。

「うばばばばばば」
「お、ぃ……ゴニョゴニョゴニョ」

爆弾犯はびくびくと怯えながらも、なにやら内緒話をし始めた。

「……っ」

ガイルはまた大きく踏み出す。今度は爆弾犯の前までたどり着くのに、まばたきをする一瞬ほど。そして先ほどのような大振りではなく、剣舞のような細かく鋭い攻撃を連続で仕掛けた。

「うぎゃひー! さささっ、三十六計!」
「逃げるにしかず! ってな!」

しかし、またも爆弾犯にはかすりもせずに、しかもそのままうまい具合に両脇をすり抜けられた。

「待てこの野郎っ!」

ガイルは叫ぶが、爆弾犯は先ほどのガイル並みのスピードで広場を駆け抜け一番奥にあった曲がり角で姿を消した。

「くそっ!」

ガイルは大きく舌打ちをしながら、爆弾犯を追いかけ始める。だが、二つめの曲がり角の先は十字路になっていて、足跡などの痕跡は全く残されていなかった。おまけに微妙に見つけた足跡らしき土のずれを見つけたと思ったら、その先は……。

「行き止まり……はっ、手の込んだことだ」

バシンと渋い表情で、ガイルは頭を叩いた。あの足の速さだったら、もうどこかの崩れた壁やらから遺跡の外へ逃げているだろう。
ガイルは苛立ちやメラメラと全身から溢れる殺気を隠そうともせずに、早足で爆破された広場へ戻っていった。そしてガイルとほぼ同時に、反対側の通路からレーゲルが広場へ飛び込んできた。

「あ、あなた、爆弾犯は?」
「逃げられた……くそ、猿みたいに動き回りやがって」

ガイルはとうとう怒りが爆発、勢いよくその場に剣を突き立てた。
ガッ!
レーゲルはびくっとガイルを見つめ、そして彼の出てきた通路をのぞいた。

「こちらへ?」
「ああ、途中十字路で、見失った」
「そうですか……ここから先は、私でもわかりません、し……」

ポツリと無念そうにつぶやくレーゲルだったが、最後まで言う前に言葉が途切れた。ガイルは首をかしげながら、レーゲルの視線をたどる。
レーゲルが見ていたのは地面。ガイルの剣が突き立てられた、その……。

「……あの、それは、あなたですよね」

引きつった笑みを浮かべながら、レーゲルは顔を上げた。
ガイルが剣を突き立てた下にあったのは、黄色っぽい土にまみれた……かろうじて爆破の衝撃から逃れていたらしい石版だった。

「…………」

ガイルは無表情のまま、ゴッと剣を引き抜く。沈黙を保ったまま、黒塗りの鞘へ刀身をしまい、ジャケットの中へ隠す。

「ちょっとあなた剣しまわないで、それこっちで始末書書かなくちゃいけないんですからっ! 身体検査でその剣通さなかったでしょう!」
「あー、そうか。イースティトはヨーゲンバードと違って、武器類は結構取り締まり厳しいんだっけ……あー」
「よ、ヨーゲンバードって……あ、あなた国外からの観光者なんですかっ! って、その口調、入国審査でもまさかっ」
「いえいえ許可もらったヨー、コレ本当ヨー」
「あきらかに棒読みですよねぇっ! それ信じろっていうのが無理です。ちょ、無許可? 無許可なんですかエエェー!」

どたばたとわめくレーゲル、冷や汗を流しながらそそくさとその場を離れようとするガイル。

「あ、ちょっとあなたどこ行くんです? さっさとリーゼ戻って入国管理所でその剣の許可証つくってもらってくださいねってまさかさらに犯罪重ねて不法侵入なんか」
「してねぇっ! あんたどこまで被害妄想強いんだよっ! 確かに剣は隠したが入国パスはきっちり取ってるっつの! というか俺の剣より爆弾犯だろ爆弾犯!」
「確かにそっちも国際的に大問題であってあなた初の目撃者ということですけどねっ! でもとりあえず目の前の問題からっ……あ、なにげに今無許可ってこと肯定しましたね?」
「…………」
「黙ったー!」
「やかましいっ! 剣一本持ち込んだぐらいで騒ぐなぁっ!」

ぎゃーぎゃーと騒ぎながら二人は遺跡の正門前へ……ティルーナとヤオタがぼけっとしながら突っ立っていたその場所へ戻ってきた。