□ 第四巻 賢き獣の宴 - 第二章 6.いじめ、成敗! ギャンギャンドンガラガッシャンぎにゃーフーッバウバウバウがおーズドガシャ! 広場の周囲の家々から、またひどい騒音が聞こえてくる。動物たちが暴れ回って駆け回って、家の中がめちゃくちゃにされていく情景が目に浮かぶ。 「あらー大変」 しかし、フィロットの住人たちにしてみればその程度だった。クランは冷静・・・・というか、脳天気すぎる反応の住人たちに、がくっと気が抜けた。ビリーがその肩を慌ててさすると、ガシガシと頭をかきながら先ほどの『ガレアン』補佐官が、部下への指示を終えてまた近づいてきた。 「あー、まぁとりあえず、そちらの動物たちも町中の動物たちも、どっちも沈静化してくるよう近くの警備隊員に言っておきました。私もそろそろ出ます。その前に、団長殿はどこか・・・・ああ、町長宅にでも戻って休んでてください。あそこなら、落ち着いてられるでしょう」 「すでにこの状況から、落ち着いてなどいられませんが」 クランは半ば呆然と周囲を見回した。あーあ、だの、これからどうする、だの、面倒だなーだのとこの動物たちの狂気の声が響き渡る広場のど真ん中で、まったく平静でいられる住人たち。ああ、だからなのか、この町が『変人の町』たる由縁は、これなのか。 ぐるぐると、今までフィロットにやってきた旅人たちと同じような思考の渦にはまりかけたクランを、補佐官はさっさと抱え上げ、ビリーに伝えた。 「では、今言ったとおり団長殿は町長宅で治療を受けてもらう。あと、旅芸人の者たちにも、混乱が治まった後でいいから動物捕獲に協力して欲しいと言ってくれ。『ガレアン』はもう動き出してるから・・・・。あー、なんかこのドタバタ、ひっさしぶりだなー・・・・」 最後の方は、はるか彼方を眺めるような口調でぼそりとつぶやき、補佐官はその場を離れていった。 残されたビリーは、しばらく考え、とりあえず皆にこのことを伝えに行かなければと踵を返した。『ガレアン』の指示を受けたり、自発的にだったりと、広場からは住人たちの姿が目に見えて減っていた。中にはすでに暴れ回る犬猫をとっ捕まえている者もいる。 舞台の裏に設置されている、簡易衣装部屋へ向かいかけて、ビリーはふいに後ろからどつかれた。「わっ」と声を上げて前につんのめり、耐えきれず倒れ込む。 「話、聞いてたぞ。この落ちこぼれ、全部台無しにしやがって!」 「檻を壊すとか、あんた本当に救いようがないわね。団長に怪我までさせて」 つい先ほどまで、舞台の上で演奏をしていたり、踊っていた芸人の少年少女たちだった。皆、顔を赤くさせたり青くさせたりして、怒りや憎しみの感情をさらけ出している。ビリーはそれを真正面からぶつけられ、尻餅をついたまま後ずさった。 「ご、ごめ・・・・」 「お前なんか、一座から出てけよ! 落ちこぼれはいらないんだよ!」 小太鼓叩きの少年が、ヒステリックに叫んだ。ビリーは目を見開く。五感が、ぱっと弾けて何も感じられなくなったように思えた。体を震わせることも出来ない。 『イラナイ』。 ざっくりと、心がえぐられる。 「あ」 「・・・・そこの一座の人ー、なんか招集かけられてますよー。いいんでーすかー?」 そこで、動物の狂った声のなか、のんびりと少女の声が聞こえてきた。たかたかと軽快な足音、こちらへ近づいてくるようだった。 小太鼓叩きはチッと舌打ちをして、不機嫌な表情のまま、同じような面持ちの仲間たちとともにその場を去ろうとした。舞台裏にやってきた少女と、向かい合う。オレンジ色のさらさらした髪に、笑っているような細い目の少女・・・・ティルーナだった。 「ったく・・・・」 邪魔だな、と思いはしたが、さすがに初対面の人間にまで八つ当たれるほど、小太鼓叩きもその他の少年少女も図太くはなかった。なんとか無表情を装って、形ばかりの礼をしながらティルーナの脇を通り過ぎ。 「ちなみに私は、一対多数のいじめっ子はだーい嫌いなんですよねー☆」 「は」 実に、実に可愛らしい声をティルーナが発したかと思うと、ちょうどその隣を通りかけた小太鼓叩きがひっくり返った。華麗な足払いを受け両足が宙に浮き、ポケットに手を突っ込んでいたため、顔面から石畳へダイブする。 「んごぅううううががががっ!?」 「わぁ変な悲鳴。けど華麗に顔面ダイブを決めておいて、なおかつ石畳に着地しても鼻血を出さないとは、なかなかやりますね」 一通り感嘆した後、うむ! と楽しげな様子で、ティルーナはくるりとその場で一回転する。突然の出来事にあっけにとられていた他の芸人少年たちも、ごろごろとひっくり返っていく。もちろん、純白の衣装をまとったままの少女たちも同じように。 ビリーはその様子を見て、思わずこぼれそうになった涙が完璧にひっこんでいることにも気づかなかった。ティルーナは満面の笑みを浮かべながら、男女平等、ほんの一つまみ程度の手加減もしていなかった。 「って、めぇ! なにしやがんだ!? 関係ないヤツは引っ込んでろ!」 と、そこでなんとか受け身をとっていた少年の一人が、素早く起き上がってティルーナの背中に向かって、拳を握りしめながら走り出した。ビリーは息を呑む。あのままでは、殴られる。 「だっ「あぁーらよっと」 「だふぉっ!?」 ズドンという効果音がよく似合いそうな跳び蹴りが、少年の死角から放たれた。口から泡を吹いて気絶し、ぴくぴくと痙攣する少年を鼻高々に見下ろすのは、この場にいる誰よりも幼く見える黒髪の少年。 「ふっふーん、このアイル様の跳び蹴りを食らって気絶なんて、たいした幸せ者だ! 崇め敬え感謝しろ!」 「って、なんだよそのあまりに理不尽すぎる自己中思考は!? なんで蹴り入れた相手に感謝せにゃならん!」 「なに、口答えするかお前」 生意気な造作、生意気な口調の典型的わんぱく小僧なアイルは、ぎろっとツッコミをいれた少年を睨みつけた。深緑色の瞳は、これ以上ないほど据わっている。 「旅芸人といえば旅、旅といえば仲間、仲間といえば友情、協力、一部パシリ! 弱肉強食・・・・は違う違う、これ姉ちゃんの知識だ。とにかく、いじめなんて言語道断、そんなことしてる間に命がなくなるぜ!」 「お前、そのクサイ上にウザイ連想のなか明らかになんか不安要素が混じってたよな今」 「気にするな細かいヤツには大回転蹴り!」 「あ、バナナの皮もどーぞです」 あたー! という声と共に、アイルの伸ばされた足のつま先が、少年の右肩を捕らえた。思い切り後ろに仰け反って、少年は足をばたつかせる。が、そこにはさりげなーくティルーナが配置したバナナの皮。 ずる、ゴガッ 「「いえーい!」」 「わぁ、ルーお姉ちゃんも、アイルくんも強いー!」 パンッとハイタッチを交わす二人のそばへ、またもう一人、物陰から少女が飛び出してきた。おもむろに新たな登場人物へ目をやったビリーは、今度こそ言葉を失った。 うっすらと透ける、桃色の髪と瞳、雪のように白い肌。その少女は、まるで。 「せ、せ、せ、セーレーン族!? こんな町中に!? しかもこの辺、炎とかないし!」 炎に属するセーレーン族、その言い伝え通りの容姿をした少女を見て、ぎゃーっと叫び出すビリーを眺め、三人はひょいと肩をすくめた。 「落ち着いてください道化師さん。この子純粋セーレーン族じゃないんですよ〜」 「ベリアです。おとうさんがセーレーン族で、おかあさんが人間です! よろしくおねがいします」 「俺は、アイル! 姉ちゃんが『ガレアン』でリーダー補佐をしてるんだぜ!」 「そこらへんの設定は今暴露しなくても、別にどうでもいいです。まったく持って伏線になりゃしませんしねー」 「ティルーナ、なにぶつくさ言ってんだ? え?」 まるで訳が分からない、という風にアイルは肩をすくめた。「いえ分からなくていいんですよ〜」と笑い続けるティルーナは、隣に立つベリアの頭をポンポンと撫でている。 「あ、えっと、助けてくれて、ありがとうございました」 「いーえ、いいんですよ。でも、やっぱりどこにでもああいう人間はいるものなんですね」 腕組みをし、眉根をよせてつぶやくティルーナの隣で、アイルは舌打ちをしベリアが途端に泣きそうな表情になった。ビリーは慌てて両手をばたつかせ、大したことはない、いつものことだから慣れていると答えた。 すると。 「いっつもあんな風に言われてんのかよ!? お前さー、もうちょっと言い返したりとか」 「だって、全部本当のことですし、僕、言い返せる要素ありませんから・・・・」 「でも、道化師さんなんでしょう? 玉乗りとかーお手玉とかー」 「・・・・あんまり、できません。彼らみたく、楽器を使ったり、踊ったり、歌ったりするのは、壊滅的なんです」 「あららー、そりゃダメだわな」 「アイルくん、君は一体どっちの味方なんでしょうかー?」 「わ、悪かったスマン道化師さんってかティルーナ顔近い近い近いっ!?」 「アイルくんも、ルーお姉ちゃんもなかよしだね」 「え、思いっきりガン飛ばしてる人と飛ばされてる人の構図だけど」 さりげなくビリーは突っ込んでみる。だが、そこで三人から反応が返ってくるよりも早く、「ああっ」と叫んで勢いよく立ち上がった。 「ぼ、僕も動物たち、探さなきゃ! というか僕が率先して探さなきゃならないんだっ」 「そうなんですか? そういえば、確かにさっきから動物という動物がやかましいですよねー」 「だよな。大人たちも、そいつらまとめて捕まえて、どっかに集めてるみたいだし」 「ベリアもやるっ! 動物さんと、追いかけっこ!」 きゃっきゃと無邪気に笑うベリアに、ビリーは顔を引きつらせた。だが、残りの二人はおもしろそうにニヤリと笑うと、彼女の手をそれぞれ握って、意気揚々とその場を去ろうとする。 「では、大人に子どもの力を見せてやりましょう! ということで道化師さん、さよーな」 「ぼ、僕も一緒に行きます! ひ、一人より二人、三人より四人です!」 ビリーは慌てて、三人の後を追いかけた。きょとんとした様子の三人だったが。 「では! 道化師さんも交えて、みんなで動物を捕獲しに行きましょうー! ・・・・あ、道化師さんって呼びづらいですね。名前はなんていうんですか?」 「ビリーです。そ、それじゃ行きますか」 四人は舞台裏を抜け出し、すでに人のいない広場を駆け抜けて、動物の叫び声がひっきりなしに聞こえてくる大通りの方へ向かっていった。 「おい、俺のバイト項目には『「ガレアン」協力にて一座興行中の警備』とあったはず、なんだが・・・・これは一体どういうことだ」 「そんなものは知ったことじゃありません。口より手を動かしなさい」 「存分に動かしているだろうがっ!」 ガイルは鞘から抜かないままで、黒塗りの剣を素早く振り切った。ギャワンッ! と悲鳴を上げて、白目をむいて飛びかかってきた犬が吹っ飛ぶ。 フィロット東通りで、メルティナとその配下の班と共にたるい警備をしていたガイルだったが、突然の指令に苛立ちを募らせていた。なぜに凶暴化した動物の沈静などをせにゃならんのだ。しかし、これをしなければ、ウマイ仕事代も泡と消える。 「ったく、急にどうしたっつーんだ、うっとうしい」 「一座が町長宅に預けていた、一座の動物たちが逃げ出したのとほぼ同時刻、街の動物たちも暴れ出したということですが・・・・」 「メルティナ先輩! 新しい通信が、術者の隊員から!」 『鳥』のメモを持つ若い女性の通信隊員が、声を張り上げる。しゅるりと鞭を手元に引き寄せて、メルティナはガイルのそばを離れ、通信隊員へ近づいた。 「術者はなんと?」 「なんでも、エイルムさんからの情報らしいです。動物から動物へ、錯乱魔術が展開されているようだと。実際、暴走している動物に向けて打ち消しの術を放ったところ、けろっと治ってしまったようで」 「ふむ」 「けれど、そこにまた動物が襲いかかってくると、またその沈静化した動物が狂い始めたようで、どうやら、一度沈静化させても、暴走した動物が近くにいる限り、意識のあるまま取り押さえるのは難しいと」 「では、結局こうやって力業に頼るのが一番ということですね」 「・・・・いえまぁそうなんですけど。ってわきゃぁ!?」 女性隊員は、突然メルティナが持っていた鞭を一振りするのを目の前で見て、目をつむった。そんな彼女の背後から、ぎにゃぁっとなにやら猫が踏まれたような声が。 「現状に変わりなし、しかし、術が絡んでいるとなると『ガレアン』は少々不利ですね。エイルムになんとかしていただきましょう」 「エイルムさん一応一般人なんですが!?」 「この町の変人は一般人とは区別されません。ほら、あそこの青菜頭のように」 「誰が青菜頭だぁ!? そこまで緑緑してねぇよ!」 ぐるぐると足下を回り続ける、でっぷりした犬なのか猫なのかなんなのかイマイチ判別できない動物の背を鞘で叩いて気絶させたガイルは、不機嫌な表情で怒鳴った。 すると、近くの民家の二階から、金属同士をこすり合わせるような甲高い女の悲鳴が響いてきた。 「こ、この草餅頭! 私のジャスリンちゃんになーんてことするのよぉ!! ジャスリンちゃーん!」 「だ、あ、もーやかましいわっ! こんなワケ分からん生物、死んじゃいないんだからいいだろうっ」 「ワケ分からん生物ですって!? ジャスリンちゃんは立派な血統書付きの大ネズミなんだからぁっ」 「ネズミ!? 嘘だろこんなもさもさな特大サイズのネズミがいてたまるかーっ!!」 その後も、ガイルたちはすさまじい怒鳴り合いを続けながら、飛びかかってくる動物たちを次々沈静化していった。 エイルムは難しげな表情で、通りのど真ん中に突っ立っていた。 「エイルム、どうしたのさ。そんなとこに立ってたら『ガレアン』の邪魔じゃあない?」 「な、何か心配事でも?」 共に興行を楽しんでいた友人、ミリル、ティルト、メミィにそれぞれ心配されて、エイルムは慌てて首を振った。 「いや、なんでもないんだ」 「なんでもないわけじゃあ、ないでしょう? 何か嫌な感じがします。あまり、詳しく感じ取ることはできないけれど・・・・エイルムは、この力が何か分かっているのでしょう? 先ほども隊員の方に、何か言っていたようでしたし」 「ま、あね。うん、で、これからどうしようかーって、考えてたわけで」 「『ガレアン』の方では、対処しきれないんですか?」 恐る恐るといった風に尋ねてきたメミィにむけて、エイルムはため息をつきながら肩をすくめた。 別に『ガレアン』に所属する魔術師たちが無能、というわけではない。ただ力の隠し方が巧妙すぎて、エイルムや、それに次いでミリル、ステントラぐらいの素質の持ち主でないと気がつけないのだ。実際、エイルムが隊員に動物の暴走原因らしい魔術について報告すると、近くにいた術者たちはそろって目を丸くさせていた。まったくそんなものの気配は感じなかった、と。 十中八九、昨日逃げたあのド派手魔術師がまた何かをやらかしたんだろうな・・・・と単純な推理をしてみたわけだが。 「・・・・きた」 「へ?」 「じゃ、みんな、僕ちょっと用事済ませてくる。また後で」 「あ、エイルムさん!」 三人が驚く声も無視して、エイルムは短く詠唱し、小規模な風の魔術を発動させた。わずかばかり体が地面から浮き、そのまま滑るように移動する。 本当に微量ながら、ある一点から漏れ出しているイルミカの魔力。なんとか嗅ぎつけたはいいが、昨夜のように空を飛んでいっては、あっという間に気づかれて逃げられるかもしれない。 すいすいと曲がり角を通り抜けて、エイルムは魔力の流れ出る地点、フィロット町長宅へと向かった。使う魔力は、最大限まで抑え込み、さらにその上から結界を張ってある。これならば、たとえ気づいたとしても十分に近づいた後・・・・。 「え?」 「・・・・やはり、赤髪の魔術師の目は、ごまかせないか」 人気のない住宅街のど真ん中に、昨夜も抱えていたハンマーやモーニングスターに加え、さらに長剣を二本構えている姿のゴルセディオが立っていた。魔術を解除し、とん、と地面に降り立つ。そのエイルムの表情は、ただ驚愕一色。 「どうして」 「こちらが、お前のその強大すぎる魔力を感知できないとでも? あらかじめ通るであろう道路をチェックしておき、お前の魔力の気配を監視しておいて、こちらの動向に気づき接近してきたとき、先回りできるようにしておいた」 「・・・・あー、確かに、僕自身魔力発信器みたいなものだっけ。誰もなんにも言わないから、すっかり忘れてた」 エイルムは盛大なため息をついて、くるりと右手を回した。そこへ唐突に杖が現れる。握り構えて、エイルムはゴルセディオを見据えた。 一方ゴルセディオは、抜き身の長剣をだらんと下げたまま、ちらちらと周囲を見回していた。まったく表情は変わっていないが、無口無表情で敵う者はいないネファンとも会話が成立する、数少ない人間のエイルムから見れば、どうやら困惑しているようだった。 「・・・・あの黒ずくめの銃使いは、なぜ来ない」 「ステントラね。・・・・まさか、まだ落ち込んでるんじゃないよね」 あの夜、いくら話しかけても慰めても、一向に立ち直る気配がないゴーグル男に業を煮やしたエイルムは、半ばやけくそになってチェルフロアでガイルの家へ彼を転移させたのだった。思わず引きつった笑みを浮かべて、エイルムは頭を振る。 「まぁ、こちらにもしなければならないことがある。邪魔はするな」 「邪魔しなかったら、いろいろとんでもないことになりそうですから却下」 「そうか」 といって、ゴルセディオはようやく、長剣を胸の前で十字に構えた。エイルムは全身を包む結界を、ゴルセディオのいる方向に終結させ、膜から壁へと変化させる。 二人の息が、一瞬止まった。 「「「っきゃわ―――――っ」」」 「だっ誰か―――――っl!?」 しかし。そんなシリアスな戦闘直前の雰囲気は、やたらと元気な子供たちの絶叫によってぶち壊された。 「な、なに・・・・」 思わずすっころびかけたエイルムは、何事かと辺りを見回してみた。そして、ぴしりと固まる。実に見覚えのある子供たちが、実に見覚えのあるものに追いかけられていた。 追いかけられているのは、ティルーナにアイルにベリア、それと一座の人間らしい道化師姿の少年。 そして、追いかけているものとは・・・・。 「きっ、昨日のファンシー魔獣!?」 しかも色違いである。昨夜のは鮮やかなまっピンクであったのにたいして、こちらはボサボサ茶色の毛並みだ。その魔獣が、巨大な爪をひらめかせて四人を追いかけ回している。 「あぁもう!」 「・・・・」 ゴルセディオの脇を過ぎ、エイルムの脇すらも全力で駆け抜けていった子供たちを見て、エイルムは舌打ちをしながら、そのまま子供たちと魔獣を追いかけていった。 あとに残されたのは。 「・・・・なぜ、こうも真面目にやろうとしているのに、ぶち壊しになるのだろうか。最初から、真面目にやらなければよいのか・・・・」 無表情で苦悩する、ゴルセディオ一人が残された。 |